日々の当たり前を、もう一度丁寧に見直す
先日、月次研修として「高齢者の尊厳保持と個人情報保護」をテーマにした研修を実施しました。
今回の研修では、訪問看護で大切にすべき基本姿勢を振り返るとともに、過去1年間に社内で報告された個人情報漏えいや、その一歩手前となる事例を共有しました。
高齢者の尊厳を守ることも、個人情報を適切に扱うことも、特別な場面だけで求められるものではありません。
訪問時の声かけ、処置前の説明、書類の確認、訪問を終えて玄関を出る前の見渡しなど、日々の小さな行動の積み重ねによって守られるものです。
訪問した瞬間から、看護は始まっている
研修の前半では、高齢者の尊厳を守るための基本を確認しました。
訪問時のマナーを守ること。
「おじいちゃん」「おばあちゃん」といった呼び方をしないこと。
処置やケアの際には、肌の露出を最小限にすること。
どれも看護職として理解している内容ですが、利用者様のご自宅に伺う訪問看護では、病院とは異なる緊張感があります。


玄関で靴を脱ぐ姿や、室内での立ち居振る舞いも含めて、利用者様やご家族から見られています。
処置を始める前には、何をするのかをわかりやすく説明し、同意を得る。
本人の意向を確認し、その思いに沿った支援を考える。
本人が意思を表すことが難しい場合には、ご家族などと相談しながら、その方が望んでいたことを丁寧に推測していきます。
支援者側が正しいと思うことを一方的に行うのではなく、その方の理解と納得を確かめながら進める。
その基本が、高齢者の尊厳を守ることにつながります。
訪問看護は、特に慎重な情報を数多く扱う仕事
続いて、個人情報保護について学びました。
訪問看護で扱う情報には、氏名や生年月日だけでなく、病歴、身体状況、治療内容、薬剤情報、障害に関する情報などが含まれます。
これらは「要配慮個人情報」と呼ばれ、取り扱いによって差別や偏見につながる可能性があるため、特に慎重な管理が求められます。
訪問看護計画書や報告書、指示書、看護サマリー、契約書類、保険証の写し、ケアプラン、訪問時のメモなど、私たちの周囲には多くの個人情報があります。

しかも、訪問看護では、それらを事業所の外へ持ち出す機会があります。
情報を扱っている意識が薄れると、計画書や報告書が単なる日常書類に見えてしまいます。
しかし、そこに記載されているのは、一人の利用者様の生活や病気、家族背景に関わる大切な情報です。
実際の事例から、ミスが起こる場面を考える
今回の研修では、昨年の研修以降に報告された事例も共有しました。
どれも、特別に複雑な作業の中で起きたわけではありません。
いつもの書類を渡す。
いつもの相手にFAXを送る。
訪問先で荷物を片づける。
日常業務の中にある、わずかな確認不足や思い込みから起きています。
持ち出す書類は、その日に必要な分だけ
研修では、書類を持ち歩く際の具体的な対策も確認しました。
持ち出す書類は、必要最低限にする。
受け取った指示書などは、他の用事を優先せず、できるだけ早く事業所へ持ち帰る。
個人情報が記載された書類は専用ファイルに入れ、目的地以外では取り出さないようにします。

車内で複数の書類を広げて整理すると、書類が混ざり、別の封筒に入れてしまう可能性があります。
便利さを優先して書類をまとめて持ち歩くことは、紛失した際の影響を大きくします。
「念のため持っていく」ではなく、本当に今日必要な書類かを考えることが予防につながります。
ダブルチェックを、形だけの作業にしない
FAXの送信や書類の封入では、ダブルチェックを行っています。
しかし、確認者が名前や宛先を実際には見ず、形式的にチェックするだけでは、ミスを防ぐことはできません。
研修の中でも、ダブルチェックを行ったにもかかわらず、誤送付が発生していることが共有されました。
ダブルチェックをすること自体が目的ではありません。
宛先、利用者名、書類の内容、FAX番号を確認し、間違いを止めることが目的です。
忙しい時間帯ほど、確認は流れ作業になりやすくなります。

だからこそ、事業所内で声をかけ合い、クラークだけに負担を集中させず、スタッフ同士で確認できる体制をつくることも必要です。
個人端末やUSBメモリーを使わない理由
端末の取り扱いについても改めて確認しました。
業務では、会社が用意したiPadやパソコンを使用し、個人のパソコンやスマートフォンから業務システムへ接続しないことが原則です。
個人端末には、意図しない形でデータが保存されることがあります。
端末を紛失したり、データを消さずに他人へ譲ったりした場合、本人が気づかないところで個人情報が流出する可能性があります。
USBメモリーやSDカードなど、持ち運び可能な記録媒体も紛失の危険が高いため、使用しません。
データの共有や保存には、会社で管理するクラウドシステムを使用します。
報告が増えたことを、再発防止につなげる
研修の最後には、個人情報に関するインシデントが、以前よりも報告されるようになったことにも触れられました。
見過ごされていた事案が表に出るようになったことは、組織としての意識が高まった結果でもあります。
一方で、報告された内容を共有するだけで、同じ事故が繰り返されては意味がありません。
誤配布、誤送信、置き忘れなど、似た事例が続いているからこそ、再発防止を具体的な行動へ落とし込む必要があります。
名前を読み上げて確認する。
書類を2枚とも開いて確認する。
送信前に相手先と番号を照合する。
訪問先を出る前に室内を見渡す。
大きな仕組みだけでなく、一人ひとりの確実な行動が、利用者様の大切な情報を守ります。
尊厳と個人情報を守ることは、信頼を守ること
今回の月次研修では、高齢者の尊厳保持と個人情報保護について、基本と実際の事例の両面から学び直しました。
処置の前に説明すること。
本人の意向を確認すること。
名前や宛先を確実に照合すること。
ミスが起きた時には、すぐに報告すること。
一つひとつは、決して難しい行動ではありません。
しかし、その当たり前を丁寧に続けられるかどうかが、利用者様やご家族から寄せられる信頼を左右します。
楓の風では、実際に起きた事例を組織全体で共有しながら、同じ事故を繰り返さないための研修と体制づくりを続けていきます。
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