楓の風の研修|12ヶ月フォローアップ

2026.06.09


12ヶ月フォローアップ研修を実施しました

― 1年間の実践を振り返り、これからの看護を見つめる時間 ―

6月9日、12ヶ月フォローアップ研修を実施しました。

今回は6名のスタッフが参加し、前半は終末期ケアについての講義を行いました。
後半では、6ヶ月フォローアップ研修で事例報告を行ったケースについて、その後の経過を振り返りながら、12ヶ月を経て見えてきた自身の課題を共有しました。

入職から1年。

訪問看護の現場に少しずつ慣れ、できることも増えていく一方で、利用者様やご家族の人生に深く関わるからこそ、簡単には答えの出ない問いにも向き合う時期です。

今回の研修では、単なる成功体験ではなく、迷いや後悔も含めた率直な振り返りが多く共有されました。

そこには、訪問看護スタッフとしての成長が確かに表れていました。


6ヶ月前の事例を、もう一度見つめ直す

今回の研修で印象的だったのは、6ヶ月前に発表した事例を、時間を置いてもう一度振り返ったことです。

その後、状態が改善した方もいれば、入院やご逝去に至った方もいます。

また、関わりを続ける中で、当初見えていた課題とは別の課題が浮かび上がってきたケースもありました。

たとえば、当初は心不全や身体管理が中心課題に見えていたケースで、時間の経過とともに認知機能の低下、家族の介護負担、生活環境の調整が大きなテーマになっていったという振り返りがありました。

医療的な管理だけでは、在宅生活を支えきれない。

本人の身体状態だけでなく、家族の負担感や生活背景まで含めて見る必要がある。

1年の経験を通して、そうした視点が深まっていることが伝わってきました。


「維持できていること」の価値に気づく

リハビリ職の振り返りでは、身体機能やADLが大きく改善することだけが成果ではない、という気づきも共有されました。

認知症や虚弱のある利用者様にとって、転倒せず、体調を崩さず、今の生活を続けられていること自体が、とても大きな意味を持ちます。

一方で、ご家族からは「リハビリに来てもらっているのに、あまり変わらなくて申し訳ない」といった言葉が聞かれることもあります。

その時に、私たちが何を伝えられるか。

「大きく変わっていない」のではなく、
「低下せずに生活できている」ことの価値を、専門職としてどう言葉にするか。

それもまた、在宅リハビリの大切な役割だと感じます。


転倒を「仕方ない」で終わらせない

ある事例では、リハビリへの意欲が高まり、立ち上がりや移乗の練習が進んでいた一方で、転倒により骨折・入院となった経過が共有されました。

在宅では、病院のように環境を厳格に管理することはできません。

それでも、振り返りの中では、

「転倒を完全に防ぐことは難しくても、リスク因子を見直し、できる限り予防することはできる」

という課題意識が語られていました。

身体機能が上がってきた時期だからこそ、本人の自信や行動範囲も変わります。

その変化に合わせて、環境調整や転倒予測も見直していく必要があります。

在宅だから仕方ない、ではなく、在宅だからこそ何ができるかを考える。

そうした姿勢が、今回の振り返りにはありました。


ご家族の悲しみに、どう寄り添うか

終末期ケアに関する振り返りでは、ご逝去後のグリーフケア訪問についての共有もありました。

ご家族は、時間が経ってからも、当時の判断やケアについて迷いや後悔を抱えていることがあります。

「自宅で良かったのか」
「病院の方が良かったのではないか」
「もっとできたことがあったのではないか」

そうした言葉に対して、すぐに答えを返すのではなく、沈黙も含めて聴くこと。

ご家族ができなかったことではなく、確かにできていたことを一緒に思い出すこと。

その関わりが、グリーフケアの中で大切になることが共有されました。

ご家族が夜間も口に氷を運んでいたこと。
家に帰りたいという本人の願いを叶えたこと。
自宅だからこそできたケアがあったこと。

看護師がその姿を見ていたからこそ、後から言葉にできることがあります。

ご家族の悲しみに触れることは、看護師自身にとっても簡単ではありません。

それでも、グリーフケアを通して日々の看護を振り返ることは、次のターミナルケアにつながっていく大切な学びになります。


その人の「生きる支え」を大切にする

別の事例では、長年続けてきた仕事やお店が、その方にとって大きな生きがいになっていたことが共有されました。

体調が悪くなっても、毎日お店を開ける。

それは単なる習慣ではなく、その人らしさを支える大切な営みでした。

訪問看護では、病状や数値だけでなく、
その方が何を大切にして生きてきたのかを知ることが欠かせません。

状態が変化していく中で、本人の思いをどう受け止めるか。
家族の思いとどうつなぐか。
主治医や多職種とどう共有するか。

「次にやろう」と思っていたことが、間に合わなくなることもあります。

だからこそ、気づいた時にすぐ動くこと。
迷いを一人で抱えず、スタッフに共有し、カンファレンスにつなげること。

その大切さが語られていました。


「死にたい」という言葉を、どう受け止めるか

今回の振り返りの中には、「死にたい」という訴えへの関わりについて、深く考えさせられる事例もありました。

その言葉を、単に「つらさをわかってほしい表現」と受け止めていたが、結果として自傷のリスクを十分に捉えきれていなかったという振り返りです。

傾聴することや寄り添うことは大切です。

しかし、それだけでは足りない場面があります。

言葉の裏にある絶望感や自責感、家族に迷惑をかけたくないという思いを、どうアセスメントするか。

「大丈夫だろう」という主観に頼らず、客観的な評価やカンファレンスを通して多面的に捉えること。

そして、ご家族にも観察点や緊急時の連絡の目安を共有していくこと。

訪問看護師として、もう一歩踏み込んだ関わりの必要性が共有されました。


12ヶ月目に見えてきた、それぞれの課題

今回の研修では、参加者それぞれが、自身の課題をとても具体的に言葉にしていました。

  • 利用者本人だけでなく、家族全体を支援対象として捉えること
  • 認知症や高次脳機能障害への理解を深めること
  • 転倒リスクを再評価し、在宅で実現できる対策を考えること
  • グリーフケアを継続し、日々の看護に活かすこと
  • 本人と家族のつながりを支えるコミュニケーションを重ねること
  • 「死にたい」という言葉を多面的に評価し、多職種で対応すること
  • 自分のアセスメントや予測を可視化し、チームに共有すること

1年経ったから完成するわけではありません。

むしろ、1年経験したからこそ、見えてくる課題があります。

それは、訪問看護がそれだけ奥深い仕事であり、一人ひとりの人生に深く関わる仕事だからだと思います。


訪問看護師として育つということ

今回の12ヶ月フォローアップ研修を通して感じたのは、参加者の皆さんが、単に「できることが増えた」のではなく、看護の意味を自分の言葉で考え始めているということでした。

うまくいったことだけではありません。

もっと早く動けたのではないか。
違う関わり方ができたのではないか。
家族の思いを十分に聞けていただろうか。
本人の小さなSOSに気づけていただろうか。

そうした問いを持ち続けること自体が、訪問看護師としての成長なのだと思います。

楓の風では、入職後のフォローアップ研修を通じて、同期とともに経験を振り返り、自分の看護を見つめ直す時間を大切にしています。

現場で悩み、迷いながらも、利用者様とご家族にとってよりよい関わりを探し続ける。

その積み重ねが、楓の風の看護の質につながっていきます。