非薬物療法の緩和ケア
1月の月次研修として、楓の風所属のがん看護専門看護師(CNS)による講義
「非薬物療法の緩和ケア」を実施しました。
1〜3月にかけて行う緩和ケアシリーズの第1回目となる今回の研修。
訪問看護の現場で私たちが日々行っているケアを、あらためて“緩和ケア”という視点で整理し直す、とても大切な時間になりました。
まず何より、このような専門性の高い内容を、現場目線でわかりやすく伝えてくれた看護師さんの存在に、心から感謝しています。
緩和ケアは、がんだけのものではありません
講義の冒頭で共有されたのは、緩和ケアを必要とする主な疾患について。
- がん
- 心不全などの心血管疾患
- COPD(慢性閉塞性肺疾患)
- 腎不全
- 神経疾患
特に心不全は、がんと比べて症状の進行が緩やかな分、苦しい期間が長くなりやすいことが多いとされています。
私たちが日々訪問している利用者さまの多くが、まさにこうした疾患を抱えながら在宅で生活されています。
緩和ケアは特別な場面だけでなく、日常の訪問看護そのものと深く結びついていることを、あらためて実感しました。
現場のリアルな悩みと向き合う時間
事前アンケートでは、
- 痛み
- 呼吸困難
- 吐き気・嘔吐
- 倦怠感
- 抑うつ
といった症状対応への悩みが多く挙げられました。
また、
- 薬を使っても楽にならない
- つらそうな方にどう接していいかわからない
- 「死にたい」と言われた時の対応に迷う
といった声も共有されました。
講師からは、
薬物療法と非薬物療法を併用することで、完全な解消は難しくても“和らげる”ことはできる
という言葉がありました。
現場で迷いながらも利用者さまに向き合い続けている看護師たちの姿を、専門職としてきちんと肯定してくれる内容だったと感じています。
いちばん大切なのは「ケアの精神」
今回の研修で、もっとも印象的だったメッセージのひとつが、
緩和ケアは「キュア(治す)」ではなく「ケア」
という考え方です。
症状が思うように改善しなくても、
- 諦めずに考え続ける
- 一緒にできることを探す
- その姿勢を見せ続ける
それだけで、
- 安心感
- 信頼感
- 「自分のことを考えてくれている」という実感
につながり、身体は変わらなくても気持ちが少し楽になることがあります。
技術以前に、向き合い続ける姿勢そのものが緩和ケア。
私たちが日々大切にしている関わり方そのものだと感じました。
日常のケアが、そのまま非薬物療法
非薬物療法とは、「薬以外のすべてのケア」を指します。
研修では、訪問看護の現場ですぐに活かせる実践として、以下が紹介されました。
マッサージ
期待できる効果として、
- 痛みの軽減
- リラックス
- 血流改善
- 触れられることによる安心感
などが挙げられました。
大切なのは「なんとなく」行わず、
- 筋肉の張り
- 姿勢
- 痛みとの関係
をアセスメントしながら、必要に応じて薬の調整とも併せて考えること。
また、骨転移やリンパ浮腫など、注意が必要なケースも共有されました。
頭皮マッサージ・耳マッサージ
体の中心部に触れにくい場合でも取り入れやすいケアとして、
- 頭皮マッサージ
- 耳マッサージ
も紹介されました。
短時間で実施できる一方、触られるのが苦手な方もいるため、必ず本人の反応を大切にしながら行うことがポイントです。
コミュニケーションも立派な緩和ケア
痛みを和らげる要因として、
- 誰かにわかってもらえる
- 人と触れ合う
- 不安が減る
- 気分が良くなる
といった点が挙げられました。
「死にたい」と言われた時も、無理に正しい答えを返そうとせず、
「それほどつらいんですね」
と相手の言葉をそのまま返すだけでも、理解されている感覚につながります。
対話そのものが、非薬物療法のひとつです。
アロマセラピーと緩和的リハビリテーション
補助的なケアとして、アロマセラピーや緩和的リハビリテーションについても紹介がありました。
終末期のリハビリでは、
- ADL改善ではなく
- 生活の質をできるだけ保つこと
を目的とし、
「温泉に行きたい」など本人の希望を目標にすることで、自己コントロール感を取り戻すきっかけになることも共有されました。
PT・OTが関わることで、孤独感の軽減につながる場合もあるそうです。
非薬物療法で大切な3つのポイント
最後に示された実践上の原則です。
- 薬物療法と必ず併用する
- 実施したケアは効果を評価する
- やりすぎない・追求しすぎない
また、訪問診療が入っている場合は、実施しているケアを共有することの重要性も伝えられました。
私たちが普段やっていることは、すでに緩和ケアです
講義の締めくくりにあった、
皆さんがやっていることは、きちんと緩和ケアとして成り立っています
という言葉。
これは、日々現場で利用者さまと向き合っている看護師一人ひとりへの、何よりのエールだったと思います。
特別なことではなく、
- 触れる
- 聴く
- 諦めずに関わり続ける
その積み重ねこそが、非薬物療法による緩和ケアの本質。
楓の風には、こうした姿勢を大切にしている看護師たちがたくさんいます。
その現場力を、これからも誇りに思いながら、学び続けていきたいと感じた研修でした。
