透析の基本と透析患者さんの暮らし


― 「見る・聞く・つなぐ」で、透析患者さんの生活を支える ―

先日、楓の風の月次研修として、聖隷横浜病院 血液浄化センターの透析看護認定看護師を講師にお招きし、「知っておきたい透析の基本と透析患者さんの暮らし」をテーマに研修を実施しました。

楓の風でも、透析を受けながら在宅で生活されている利用者様に関わる機会があります。

今回の研修では、透析の仕組みを覚えることだけではなく、透析という治療が、その方の身体や日々の暮らしにどのような影響を与えているのかを、訪問看護の視点から学びました。

透析は「治療の時間」だけでは終わらない

血液透析を受ける方の多くは、週3回、1回数時間にわたる治療を続けています。

しかし、実際の負担は透析を受けている時間だけではありません。

朝起きて準備をし、病院へ移動し、透析を受けて帰宅する。帰宅後には倦怠感や血圧低下、眠気や食欲低下が生じ、翌日の午前中まで疲れが残る方もいます。

透析によって、入浴や買い物、家事、仕事、家族の中での役割、友人との時間まで影響を受けることがあります。

講師からは、患者さんが「何を諦めているのか」だけではなく、「何を続けたいと思っているのか」に目を向けることの大切さも伝えられました。

数字だけではなく「いつもと違う」を見る

訪問時に確認するポイントとして、血圧、体重、浮腫、呼吸状態、食欲、排便、活動性、倦怠感、皮膚の状態などが紹介されました。

ただし、すべての項目を機械的に確認することが目的ではありません。

大切なのは、「その方の普段と比べてどうなのか」という視点です。

たとえば血圧が低くても、普段から同程度なのか、透析直後なのか、それともいつもと明らかに違うのかによって意味は変わります。

体重の増加、むくみ、息苦しさ、食欲低下といった情報も一つずつ見るのではなく、いくつかの変化を組み合わせて考えることで、体の中で何が起きているのかを推測していきます。

「食べてはいけない」ではなく、その人が続けられる方法を

食事についての話も、とても印象的でした。

透析患者さんというと、水分やカリウム、リンなど「制限」のイメージを持ちやすいですが、高齢の透析患者さんでは、むしろ食事量の低下や低栄養、フレイルが課題になることがあります。

そのため、単純に「あれは食べてはいけない」と制限するのではなく、その方の栄養状態や生活状況を見ながら、服薬の調整なども含めて考えていきます。

講師は、「食事制限」ではなく「食事管理」という言葉を使い、できないことを責めるのではなく、何なら続けられるのかを一緒に考えると話されていました。

これは、在宅看護にも通じる大切な姿勢だと感じます。

透析施設と訪問看護は「違う時間」を見ている

今回の研修で特に印象に残ったのが、透析施設と訪問看護の関係についてのお話でした。

透析施設のスタッフは、透析中や透析前後の患者さんを見ています。

一方、訪問看護師は、自宅に戻ったあとの生活を見ることができます。

「違う時間を見ているけれど、同じ患者さんを見ている」

だからこそ、双方が情報を共有する意味があります。

「透析後、以前よりぐったりしている」
「食事量が落ちている」
「外出することが減った」
「最近、透析に行きたくないと言うようになった」

こうした生活の変化は、透析室だけでは見えない情報です。

訪問看護師がその変化を伝え、透析施設から治療中の状況を共有してもらうことで、一人の利用者様を一緒に支えることができます。

「見る・聞く・つなぐ」

研修の最後に、今回の学びが3つの言葉にまとめられました。

見る。
いつもと違う変化に気づく。

聞く。
本人がどう感じ、生活にどのような影響が出ているのかを知る。

つなぐ。
気づいた情報を透析施設や多職種へつなげる。

「透析と関係があるか自信がないから」と、すべてを訪問看護師だけで判断する必要はありません。

「少し気になる」と感じた段階でつながることが、利用者様の生活を守ることにつながる。

外部の専門家から、透析医療の知識だけでなく、地域で一人の患者さんを支えるための連携についても学ぶことのできた、非常に実践的な研修となりました。

楓の風では、社内の研修だけでなく、専門領域で活躍されている外部講師から学ぶ機会も取り入れながら、日々の訪問で利用者様の変化に気づき、より適切な支援へつなげられる看護を目指していきます。