6か月フォローアップ研修を実施しました


― 利用者様の「その人らしさ」を支える看護を考える ―

9月15日、今年4月入職のスタッフ9名を対象に、6か月フォローアップ研修を実施しました。

前半は、がん性疼痛看護認定看護師である当社の所長より、「ACP・自己決定支援」と「スピリチュアルケア」についての講義がありました。

後半は、それぞれが現在担当している「気になる利用者様」について事例を持ち寄り、利用者様の背景や療養環境、今後への意向、現在行っている看護やリハビリについて共有しました。

入職から半年。
日々の訪問に慣れ、できることが増えてきた一方で、単に病状を管理するだけでは答えの出ない問いにも向き合い始める時期です。

今回の発表には、そんな6か月目ならではの看護の深まりが表れていました。


訪問を重ねることで、本人の気持ちが動き始めた

ある事例では、訪問開始当初、療養生活に対する意欲が乏しく、周囲から見ると「やる気がない」とさえ感じられる方が紹介されました。

それでも看護師が週2回の訪問を続ける中で、少しずつ変化が生まれました。

やがて本人から、

「外を歩けるようになりたい」

という希望が聞かれるようになり、病状管理やリハビリにも前向きになっていったそうです。

病状を管理するだけではなく、関係を続けることで、その方の中に眠っていた希望が少しずつ言葉になる。

この方にとって、訪問看護はどのような存在だったのだろうか。

そんな問いを持ちながら関わりを振り返る姿が印象的でした。


「家族の思い」と「本人の思い」の間で

別の事例では、自己注射を続けている高齢女性への支援が紹介されました。

看護師は注射手技を見守りながら、清潔援助などを行っています。
ご家族もとても熱心に関わってくださっていますが、その一方で、看護師はあることを気にかけていました。

ご家族の熱心さの中で、本人が本当に言いたいことを言えているだろうか。

家族が良かれと思って支えていても、本人の気持ちと必ずしも同じとは限りません。

ACPや自己決定支援を考える時、本人の希望を「聞いたつもり」にならず、その人が安心して自分の思いを話せる関係をどうつくるか。

訪問看護師として、どこまで踏み込み、どう支えるかを考えさせられる事例でした。


本人が医師に伝えられないことを、どうつなぐか

精神障害があり、病識に乏しい方の事例もありました。

症状が徐々に強くなり生活に影響が出ていても、本人はその状況を医師へうまく伝えることができません。

そこで看護師は、「眠れない」「不安になる」といった生活の中で実際に困っていることを整理し、診察時に伝えられるよう本人と一緒に準備しました。

さらに、通院に付き添うご家族にも協力を求めました。

結果として内服が変更され、一度は症状が落ち着いたものの、その後も病状の悪化は繰り返されています。

一度うまくいったから終わりではありません。

その都度、本人の生活を見ながら、必要な情報を医療へつなぎ直していく。

在宅で暮らす方を支える看護の難しさと役割がよく表れた事例でした。


介護の限界を迎えたご家族を、どう支えるか

末期がんが脳へ転移し、行動や言動が日常生活にも影響している方についての発表もありました。

介護を担っていたのは高齢のご主人です。

病状の進行とともに介護負担は大きくなり、ご主人は疲労困憊していました。
その結果、やむを得ず施設入所の方向となりました。

介護を続ければ、夫婦ともに倒れてしまうかもしれない。
一方で、「本当にそれでよかったのだろうか」という思いも残る。

在宅療養では、本人の希望だけではなく、ご家族がどこまで支えられるのかも大切な要素です。

正解が一つではない中で、本人と家族の両方を見ながら、その時点でできる選択を一緒に考える。

こうした場面にも、訪問看護の難しさがあります。


「できない」が増える中でも、残っている希望を探す

今回の事例の中で、特にスピリチュアルケアの講義と深く重なったケースがありました。

がん末期で、倦怠感や全身の浮腫が強くなり、食欲や活動性が低下していた方です。

本人には、

「食べたい」
「外に出たい」
「人と話したい」

という希望がありました。

しかし病状の進行により、それらを少しずつ諦めるようになり、人との関わりも避け、閉じこもりがちになっていました。

そこで看護師は、本人の希望を一つずつ拾い直しました。

好きだったお寿司や麺類を食べられるように関わることで、食事摂取量が増えました。
そして「外に出たい」「人と話したい」という思いについては、ご家族の協力を得ながら、近隣の方々が集まるイベントへの参加につなげました。

そこで本人は、懐かしい顔ぶれと久しぶりに話すことができました。

病状そのものを止めることはできません。

それでも、本人が「こうしたい」と思ったことを実現できるよう支えることはできます。


スピリチュアルケアを、実際の看護に重ねて考える

前半の講義では、スピリチュアルケアについて、村田モデルを用いて学びました。

人は、「自律性」「関係性」「時間性」という側面を持つ存在であり、そのいずれかが失われることで、スピリチュアルペインと呼ばれる苦しさが生じることがあります。

先ほどの事例に重ねると、病状の進行によって、自分でできることが減り、人との交流が減り、将来への希望も見えにくくなっていました。

しかし看護師の介入によって、

自分で「こうしたい」と考えることができた。
人とのつながりを取り戻すことができた。
「また外に出たい」という先への希望を持つことができた。

今回の講義内容と事例がつながった、とても印象的な場面でした。

スピリチュアルケアは、特別な言葉をかけることだけではありません。

その人がその人らしく在り続けるために、何を大切にしているのかを一緒に探していくこと。

日々の訪問の中に、その実践はあるのだと感じます。


6か月目だからこそ、問いが深くなる

今回の発表では、入職から半年とは思えないほど、利用者様の背景や家族関係、本人の思いまで丁寧に捉えた発表が多くありました。

半年経つと、できることが増えるだけではありません。

「この支援でよかったのか」
「本人の思いを本当に聞けているのか」
「家族も含めて支えられているのか」

そんな問いが、自分の中に生まれてきます。

それは、看護師として視野が広がっている証でもあります。


次は12か月後、同じ事例をもう一度振り返る

今回発表した事例は、ここで終わりではありません。

半年後の12か月フォローアップ研修では、それぞれの事例について、その後の経過をもう一度振り返ります。

利用者様はどのように変化したのか。
自分の関わり方はどう変わったのか。
半年間で何に気づいたのか。
そして、次にどんな課題を持って看護に向き合っていくのか。

6か月時点でこれだけ深く利用者様と向き合っているスタッフたちが、1年を迎えた時にどんな言葉で自分の看護を語るのか。

今からとても楽しみです。

楓の風では、フォローアップ研修を単に知識を確認する場ではなく、自分の実践を振り返り、利用者様との関わりから看護を学び直す時間として大切にしています。

一人ひとりの経験が、次の看護につながっていく。

その積み重ねを、これからも組織として支えていきたいと思います。