― 高齢者から「死にたい」と言われた時、私たちはどう向き合うか ―
2026年5月22日、楓の風さがみはらを中心に、地域の医療・介護関係者の皆さまとともに「在宅お悩み勉強会」を開催しました。今回は弊社主催のイベントでは最大規模の62名のご参加をいただくことができました。
そんな注目を集めた今回の勉強会テーマは、
高齢者から「死にたい」と言われた時、あなたはどうしていますか?
という、とても重く、けれど在宅支援の現場では避けて通れない問いでした。
講師には、大和市立病院 看護部の木村千晶先生(精神看護専門看護師)をお招きし、ワークショップ形式で実施しました。
当日は、医師、看護師、セラピスト、ケアマネジャー、相談員、介護職など、多職種の皆さまにご参加いただきました。
それぞれの立場から日々の実践を持ち寄り、「死にたい」という言葉の奥にあるものをどう受け止め、どう支えていくかを一緒に考える時間となりました。

正解を教わる場ではなく、現場の実践を持ち寄る場
今回の勉強会は、講義を一方的に聞く形式ではありません。
まずは参加者同士で、日頃の実践を出し合いました。
話し合ったテーマは、主に次の3つです。
- 高齢者のどのような言動や様子から、自傷や自死のリスクを感じるか
- 「死にたい」と言われた時、何と返し、どう対応しているか
- その言動を、現場でどのように共有しているか
参加者からは、「眠れない」「食欲がない」「笑顔がなくなった」「口数が減る」「家が荒れている」「急に整理を始める」など、日々の現場で感じている小さな変化が多く挙がりました。
「死にたい」という言葉そのものだけではなく、
いつもと違う様子に気づけるかどうか。
そこに、在宅で関わる私たちの大切な役割があると感じました。

「何と言えばよいか」ではなく、「どう受け止めるか」
高齢者から「死にたい」と言われた時、返す言葉に迷う方は少なくありません。
参加者の実践の中には、
- 否定せずに話を聞く
- 作業を止めて本人に向き合う
- 何がつらいのかを尋ねる
- 何も言わずに頷く
- 背中をさすりながらそばにいる
といった関わりが挙がりました。
一方で、「そんなこと言わないで」と返してしまうことがある、という声もありました。
それもまた、現場で真剣に向き合っているからこその率直な反応だと思います。
今回の学びで印象的だったのは、
「話をそらさない」ということでした。
重い言葉を受け取るのは簡単ではありません。
それでも、その言葉を口にした相手は、誰にでも言ったわけではなく、
「この人なら聞いてくれるかもしれない」と思ってくれたのかもしれません。
そう考えると、「死にたい」という言葉は、
単なる危険信号であると同時に、関係性の中で発せられた大切なサインでもあります。
TALKの原則から学んだこと
ミニ講座では、自殺対策や高齢者の機能評価に加え、「TALKの原則」についても学びました。
TALKとは、
- Tell:心配していることを誠実に伝える
- Ask:死にたい気持ちや背景について、はっきり尋ねる
- Listen:相手の訴えを傾聴する
- Keep safe:安全を確保する
という考え方です。
特に印象的だったのは、
「はっきり聞いてよい」という点です。
参加者の振り返りにも、
「自分を傷つけたくなりますか?と聞いていいことに驚いた」
「もう少しはっきりこちらから聞くことも必要だと思った」
「話をそらさず、受け止めることが大切だと感じた」
という気づきがありました。
これまで何となく避けていた問いに、
きちんと向き合うこと。
それは相手を追い詰めることではなく、
むしろ「あなたのつらさを大切に聞きたい」という姿勢を示すことなのだと感じました。
高齢者の変化を、多職種で捉える
今回の研修では、高齢者総合機能評価についても紹介されました。
高齢者の状態は、疾患だけで判断できるものではありません。
- ADL
- 認知機能
- 気分や意欲
- QOL
- 社会的背景
- 家族関係
- 生活環境
など、多面的に見る必要があります。
グループワークでも、
「身体機能の低下が、他のことにも影響している」
「できることを職種全員で共有したい」
「フレイルの進行に早く気づいてあげることが大切」
といった声がありました。
高齢者の「死にたい」という言葉の背景には、
痛みや病気だけでなく、孤独、役割喪失、経済的な不安、家族関係、生活の不自由さなど、さまざまな要因があります。
だからこそ、一つの職種だけで抱えるのではなく、
看護師、ケアマネジャー、介護職、医師、相談員などが、それぞれの視点で変化を持ち寄ることが大切です。
グループワークで生まれた、明日からの小さな改善
勉強会の後半では、参加者同士で「明日からできること」を話し合いました。
出てきた気づきは、どれも現場に根ざしたものでした。
- 横に座る、90度以下の位置で話す
- 作業の片手間ではなく、きちんと向き合う
- 目線を合わせる
- 相手の気持ちを受け止める
- 何がつらいのかを聞く
- 多職種を巻き込んで考える
- 自宅内の様子をよく観察する
- いつもと違う変化を共有する
どれも大きなことではありません。
けれど、こうした一つひとつの関わりが、
「この人には話してもいい」と思っていただける関係につながっていくのだと思います。

参加者の声から見えた、地域で学ぶ意味
アンケートでは、
「大変勉強になった」
「普段向き合えないテーマだったので良かった」
「他職種の意見を聞けて参考になった」
「もっと時間をかけて話したかった」
「今後のケアに活かしていきたい」
といった声が多く寄せられました。
特に印象的だったのは、
「他の方の意見を聞けたことが良かった」という感想です。
在宅の現場では、それぞれが個別のケースに向き合っています。
だからこそ、こうして一度立ち止まり、地域の専門職同士で考えを共有する時間には大きな意味があります。
また、楓の風さがみはらへの期待としては、
- 情報共有と連携
- 相談しやすさ
- 密な連携
- 利用者に本当に必要なケアを見つけること
- 優しさや誠実さ
- 話しやすい姿勢
などの声も寄せられました。
勉強会の終了後は懇親会を行い、参加者の皆様と軽食をいただきながら、交流をすることができました。


「相談してよかった」と思っていただける事業所であるために
今回の勉強会は、単に知識を学ぶ場ではありませんでした。
高齢者から「死にたい」と言われた時、
すぐに解決できる答えがあるわけではありません。
それでも、
- 気づく
- 声をかける
- 話を聞く
- 必要な支援につなぐ
- 見守る
という一つひとつの関わりを、地域全体で積み重ねていくことはできます。
楓の風さがみはらでは、これからも地域の皆さまとともに、
在宅で暮らす方とそのご家族を支えるための学びと連携を大切にしていきます。
「困った時に相談できる」
「一緒に考えてくれる」
「地域の中で顔が見える」
そんな存在であり続けられるよう、今後も取り組みを続けてまいります。
